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ペンキ?塗料?水性?溶剤?
希釈率とは、塗料にシンナーや水で薄めて混ぜて使う割合の事です。
シンナーに混ぜて使う塗料は溶剤形といい、水に混ぜて使う塗料は水性形といいます。

〇シンナーと混ぜて使う塗料… 溶剤形 (木部、鉄部によく使われる)
〇水と混ぜて使う塗料… 水性形 (壁によく使われる)

ある家で塗り替えをしている時、シャッターを塗ろうとその家の奥さんと色の打ち合わせをしていたときの事です。
奥さんが「壁の材料とおなじものでいいわよ」とおっしゃいました。
しかし、壁で使った塗料は鉄のシャッターには使えません。

逆に、雨戸などに使うペンキは、モルタル壁やサイディングボードには使えないのです。
塗料に全く無知な人は塗り替えのとき、すべてをペンキで塗ると思っている人がいるのも事実です。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?

「塗料=ペンキ」と解釈され、間違ってはいませんが、実はペンキは“無数にある塗料の中の代表的なひとつ”にずぎず、木部や鉄部を塗るものであって、壁には塗れません。
壁には壁用の塗料があり、屋根には屋根用の塗料があるのです。
もちろん、板張りの壁や屋根が鉄の一種であるトタンの場合などはペンキを塗れますが、要は塗る材質により、塗料もそれにあった塗料を使わなければいけないのです。

ちなみに、ペンキはシンナーと混ぜて使う溶剤形。
現在壁の塗料は水性がほとんど。
環境の配慮もそうですが、溶剤形だとやはりシンナーの強い匂いで隣近所に迷惑をかけてしまいます。

下塗りになるシーラーは希釈しないで使うタイプのものが多く、本当に水のようにしゃばしゃばとしています。
中塗り・上塗り塗料は、マヨネーズを硬くした様な感じのもので「ボテッ」とした粘度の高いものが顔を出します。
塗装仕様では、一缶の材料に対して水を一割程度入れ混ぜて使います。
粘度は少しだけやわらかくなるのですが、サラダにマヨネーズをかけたくらいに、まだしっかりと形づいています

それをローラーに付けカベに塗っていきます。
これに水を多く入れてしまうと形づくのもやっとで、すぐに全体に馴染み形が無くなってしまうのです。
水を多く入れ、まるでお好み焼きやケーキを作る生地のならともかく、それほど「トロトロ」の状態で塗っても厚みがつきづらいです。

これが、ひとつの塗装のカラクリかもしれません。厚みはつきづらいですが、塗れないことはないからです。

もちろん、あなたから見ればかなりのデメリットですが、ごまかしをしてしまう職人側から見れば水を多く入れることによって、二つのメリットがあります。

一つは楽に塗れるので作業のスピードが断然早いです。
壁の「凹凸が激しいタイプ」で塗った場合、約三倍の作業の時間短縮にもなります。
もう一つは塗り面積も広がるので使う塗料が半分以下に抑えられるのです。

お好み焼を思い出してみてください。
小麦粉に水を少しだけ混ぜて箸でかき回す手にも力を入れなければ回せない「ボテッ」とした生地と、水を多く入れてかき回すと「ジャブジャブ」と音をたてている小麦粉では、フライパンの上に流したとき、「ジャブジャブ」と音をたてる生地の方が、半分の量でもあっという間に広がり面積も広がります。

塗料を塗るのにもこれと同じなのです。
作業の時間短縮と塗料の節約、一石二鳥。これは大きいです。
この両方は職人にとって非常に都合のいいやり方です。

これは、壁を塗る水性塗料だけの話ではありません。
木部や鉄部などを塗るシンナーで薄める塗料にも同じ事が言えます。
こういった塗装dすと、塗料の性能は低下してしまい、ただの色付け塗装になってしまいます。
ペンキ?塗料?水性?溶剤?
さらに怖いのは、きっちり塗った場合と、薄く塗った場合でも、仕上がり直後の差は何も知らない人から見ると何も差異がないことです。
どちらも艶やかに、綺麗に塗れているのです。
「塗装仕様通りで塗ったトタン」と「うすく塗ったトタン」の二つのトタンがあるとします。
もしかしたら、この二つのトタンを並べ見比べたときには、何とか見分けがつくかもしれません。

それでも、たくさん塗装をして仕様をみている職人は気付けるかもしれませんが、約7年に一度しか見ない普通の人では、分からないでしょう。
「うすく塗ったトタン」ひとつしかない場合、それが「塗装仕様通りで塗ったトタン:と言われてもそう思ってしまうのです。

薄く塗られた、というのが判明するのは、早ければ二年と掛かりません。塗膜に、すぐにヒビやペンキのはがれ、ふくれなどが現れるからです。
塗料に厚みがない場合、壁であればヒビも入りやすいく、ツヤも早くなくなり、汚れやカビ、藻が付き易くなり全体の防水効果も半減してきます。

一番痛みが早いのが木部です。
木部は常に湿度の上下によって膨張したり、収縮したり絶えず呼吸しているのですが、 その上に塗ってある塗膜との膨張率が塗膜と違うため、もしペンキの塗膜が薄いとすぐにはがれたり割れたりしてきます。
鉄部に関してもペンキのはがれ、サビが早く出てきてしまいます。

逆に、塗装仕様以上に厚く塗ればいいものでもありません。

濃すぎるとハケやローラーの塗り跡がそのまま残ってしまい、キレイな肌に仕上がらず、見た目の問題が出てくるでしょう。


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